ふた冬が過ぎました。
どうやら、行者のつえのおまじないがきいているようで、あれ以来、オニが村へ下りてくることはなくなりました。
でも、そのつえは・・・。
「何だか、見るたんび、ちょっとづつ、かたがってきてるみでだなや」
つえがたおれたら、オニが、また、やって来るのでしょうか?
どうにも、落ち着きません。
用心のため、子供たちは、日暮れ前には、家に入るよう、きびしく言いつけられました。
でも、三度目の冬が過ぎて、春の気配に包まれ始めたころ、村人が、たいそう、おどろくことがありました。
まわりの山々が、だれも覚えがないほど、たくさんの桜でいろどられたのです。
もえだしたばかりの木々の緑と、あわい桜色。
山は、ため息が出るほどの美しさでした。
何か、いいことがあるのでしょうか?