3 取引
彼の岸から、お盆に帰ってきた人たち。
すなわち、霊って存在に、あたしはすでに出会っているのだと策作じいさんは言う。
「そんな、馬鹿な・・・。あたしは、霊感なんてまったくないと思います。今まで、お化けもユーレイも見たことないですし」
「アホか、キツツキは」
「いえ、アホじゃありません。どちらかといえば、賢い方かと」
「まあ、ええ。キツツキが、賢いか賢ないか、なーんてことは、どうでもええけど、おまえ、ここを、どこやと思てる?」
「越の国地方の、花盛り町大字細八字猪甲乙」
「そや。盆の花盛り町大字細八字猪甲乙を、あなどったらあかん!」
「別に、あなどってはないですが」
「盆の花盛り町大字細八字猪甲乙に、生者死者の垣根はあらへん!」
うっ!
策作じいさんは、どんだけ、あたしに、スイカの種、飲み込ませる気だ!
「か、垣根、あらへんのどすか?」
「あらへんのどす。・・・って、わいは、舞子さんかっ! 変な話し方、すな!」
「へえ。もう、しまへんどす」
「そんなら、よろしおすけど・・・、って、わいは、舞子さんかっ!」
「いえ、まったく、ひとかけらも舞子さんの要素はないと思います。もう、変な話し方しませんので、垣根の話にもどってください」
「むこうの体調、いや、死んでるのに体調は変やな。気分、そや、気分。気分によっては、あっちが垣根作ってしもて、こっちが話しかけても無視されるときは、あるけどな」
と言われると、信憑性がます。
無視って言葉に、ひっかかり、この界隈に入ってからのこと、挨拶したものの、無視されたように感じた人たちの記憶を、たどる。