サワガニの理容室(4/6)

文・ねこはるさめ  

「おきゃくさんはどちらから?」
とりあえず間を持たせるために、サワガニはハリネズミに話しかけます。

「ぼくはさびしんぼうの森から来ました」
「そこはどんな森なのでしょう」

「とても・・・暗い暗い森です。あまりにも暗いものですから、森のどうぶつたちはみんなおびえてくらしています」
「でもオバケが出るわけではないでしょう?」

「オバケは見たことありません。だけど、何かがいると思わせるほど暗いのです。そこでぼくは、体をちぢこませてくらしているのです」
「そうですか・・・。なら、こちらの森にお住まいをうつされたらいかがでしょう」
「そんなっ、ぼくのようなとげとげしい生きものがいたのでは、みなさんにごめいわくをかけてしまいます!」
ハリネズミはそう言うと、小さくため息をつきました。
「ぼくのようなやつは、さびしんぼうの森がおにあいなのです・・・」

ねこはるさめ について

和歌山県出身。ボランティアでオリジナル童話の読み聞かせ活動をしています。それ以外にも、少し大人びた児童文学テイストな作品を創作。人がいだき育む幻想を紡いだ短編を好んで書きます。 ホームページ:滑空舎 http://kakkusha.sakura.ne.jp/media/