4 セムの死
それはなみだのない、からりとしたお葬式でした。
そりゃそうです。死んだ時、セムは102歳だったのですから。
「ほんとに最後の最後まで、運のいいお人だったねえ。お昼寝したまま、死んだっていうじゃないか。よっぽど、神様に愛されたんだろうねえ」
「ここ何日も、お天気だったろう。じいさん、家の前のゆりいすで、日向ぼっこしていたそうだ。家の者も、てっきり、眠っているものだと思ってな。夕飯の時分になって、よびに行って、死んでいることに気が付いたんだそうだ」
「そのせいかねえ、ひつぎにいても、干し草のようないいにおいがするのは!」
「ああ。一日中、おてんとう様をあびていたせいだろなあ。おれも、あやかりたいもんだよ」
長く生き、よく働いて家を栄えさせ、子供たちにも恵まれ、おだやかで、だれにでも気前のよかったセムを、人々は口々にほめ、思い出に花をさかせます。
お葬式というより、お祝いみたいなものです。