いえいえ、おばけじゃありません(1/4)

文と絵・ひなたのんき

山おくのおんせんりょかんに、ぼくとパパ、二人で、とまりにきた。
「今日とまるところは、古~い、りょかんでな。おばけが出るらしいぞ」
ゴツゴツした石のかいだんを、やっと上りおわって、平らな土の道にでた時、パパがうれしそうに言った。

「え~、おばけ、こわいよ。やだよう」
びっしょりかいてた汗が、いっぺんにつめたくなって、体がブルッとふるえた。

「パパ、ぼくが、おばけきらいなのしってるくせに。どうして、おばけのいるりょかんなんかに、つれてくるの!」
「はっはっは。だいじょうぶ。そういううわさが、あるってだけさ。おばけなんて、ほんとはいないんだから」

「・・・いないの?」
「ああ、いないよ。もしいても、パパがおばけなんて、やっつけてやるさ。ほら、見えてきた。あれが、りょかんだよ」
パパのゆびさした方に、テレビで、それも、じだいげきでしか見たことのない、りょかんがあった。

ひなたのんき について

東京都出身です。空と、水のある景色と、物語の世界が大好きです。 絵は描けないけど絵本が描きたいので、絵本の文章を編集さんに見てもらったりしています。 好きな絵本作家は、かがくいひろしさん、長谷川義史さん。 好きな童話は、寺村輝夫さんの「ぞうのたまごのたまごやき」、「こまったさんのオムレツ」。 好きな物語の出だしは、安房直子さん作「きつねの夕食会」の「新しいコーヒーセットを買ったので、きつねの女の子は、お客をよんでみたくてたまりませんでした」。 こんな風に人に衝撃を走らせる一文を、自分もかきたいと思います。