山おくのおんせんりょかんに、ぼくとパパ、二人で、とまりにきた。
「今日とまるところは、古~い、りょかんでな。おばけが出るらしいぞ」
ゴツゴツした石のかいだんを、やっと上りおわって、平らな土の道にでた時、パパがうれしそうに言った。
「え~、おばけ、こわいよ。やだよう」
びっしょりかいてた汗が、いっぺんにつめたくなって、体がブルッとふるえた。
「パパ、ぼくが、おばけきらいなのしってるくせに。どうして、おばけのいるりょかんなんかに、つれてくるの!」
「はっはっは。だいじょうぶ。そういううわさが、あるってだけさ。おばけなんて、ほんとはいないんだから」
「・・・いないの?」
「ああ、いないよ。もしいても、パパがおばけなんて、やっつけてやるさ。ほら、見えてきた。あれが、りょかんだよ」
パパのゆびさした方に、テレビで、それも、じだいげきでしか見たことのない、りょかんがあった。