「ナイト、ごくろうだったな」
博士はあいかわらずパソコンに向かっている。
「どうした、ナイト。様子が変だぞ」
「博士! もうネズミをつかまえるのはいやなんです」
「何を言い出すんだ!」
「巨大ネコにもうなりたくない。以前のようにネズミたちと仲よくくらしたいんです」
オレは頭を下げた
「なんだと! バカなことをいうな。きたないネズミどもは捕まえて、処理されて当然なんだ。それがお前とこの研究所の仕事なんだ」
「し、処理って、博士、ネズミたちをひょっとして・・・」
「ククク、そうさ、きたないのがいっぱいたまったので、そろそろガス室に送りこもと思ってな」
「博士、なんてことを!」
オレは毛をさかたてた。怒りで博士に何をしでかすかわからないほど、オレの頭に血がのぼった。
「なんだ、そのたいどは。そうか、おまえももう処理すべきときがきたようだな」
博士はポケットからピストルを取り出した。
「せっかく命を助けてやったのに」
博士は、オレに銃口をむけた。
そのときだ。本棚から、ぶあつい本がふってきた。
「うわー」
ドドドッ。ゴン、ゴン、ゴーン
頭に事典があたり、神田博士は気絶した。
「ナイト!」
サラが、本棚からかけおりてきた。
「このとびらを開けて。みんなを助け出すのよ」
鉄のとびらは、いくらオレでもやぶれない。
「そうだ!」
オレはパソコンに体当たりをして、机から落とした。
ビ、ビビビ、シュシューン。
パソコンがダウンすると、とびらが開いた。
たくさんのネズミたちがうずくまってふるえていた。
「さあ、みんな、にげるのよ」
サラの声にもみんなは動こうとしない。
「どうしたの? 早く!」
「だって、こいつが、おいらたちをつかまえたんだぜ」
トーマスがオレを指さした。
「大丈夫、ナイトは生まれ変わったの。もうみんなの仲間よ。早く出て!」
わー。何百匹ものネズミが部屋から出てきた。
「さあ、行きましょう。ここを出て、みんなで平和にくらせるところをさがしましょう!」
サラの姿をオレはぼうっとみていた。
「ナイト、何してるの、早く!」
サラがふりかえった。
「おい、ナイト! 行こうぜ」
トーマスが、オレにウインクした。
「ああ、今、行く」
オレもみんなのあとを追った。
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