「・・・ゆい・・・結那(ゆいな)」
あたたかい手が、結那の肩にやわらかくふれました。
結那は、もぞもぞと首をふりました。
「う~、う、うんん・・・あっ、お母さん」
目に飛び込んだお母さんの姿に、結那は、すっくと体を起こしました。
そして、うでをせいいっぱいのばすと、お母さんをつかみました。
「おかあさん、おかあさん」
泣きながら胸にしがみつきます。
「ごめんね、心配かけて」
マスクごしに聞こえるお母さんの声にも、涙がにじんでいます。
お母さんのにおいにホッとした結那は、顔をあげると、不思議そうにあたりを見回しました。
窓の外は、すっかり暗くなっています。
「結那、心配しすぎてつかれちゃったんだね。ねちゃったからって、アンジさんがふんわりパンに連れてきてくれたんだよ」
「ありがとう、もう大丈夫だからね」と言いながら、お母さんは結那を抱きしめました。