「くるみ、聞いてくれ。エルは、最期まで家族のみんなやくるみのことが大好きだったよ」
お父さんの言葉に、カッとくるみはほほを染めた。
「そんなの、わかんないじゃん! 犬はしゃべらないんだから。エルは、『なんでここにいてくれないの?』って思ってたかもしれない。悲しい思いさせたかもしれないっ! わたしは犬のこと好きになったら悲しいから、好きになるのをやめたんだもん。ソラは・・・ソラはべつに悪くないけど。お父さんは変だよ。犬なんてぜったいわたしたちより先に死んじゃうのに、どうして何回も飼おうとするの? 悲しいだけじゃない!」
くるみは言った。くるみは涙が出そうなのをこらえ、ぎゅっと口をとじる。
くるみをたしなめようとするお母さんを押しとどめて、お父さんはゆっくり、そしてきっぱりと言った。
「彼らと出会えたことが、幸せだからだよ」
「えっ・・・?」
「出会えて幸せだった。それはぜったいに変わらない」
くりかえしてお父さんは言った。