2億4000万分の一のキセキ!(4/11)

文・ニケ  

耳が2つあるワケ

アメリカに来てから、ソラの家族にはいくつかの新しい日課が加わりました。その一つが「夜の勉強会」です。
日本にいるときのパパは、お酒を飲んで夜おそくに帰っていました。でも、ここでは毎日、夕方5時には帰ってきます。車で会社に行くのでお酒も飲んでいません。なので夜ご飯を家族みんなで食べ、そのあとに「夜の勉強会」をするのが日課になりました。

もともとはパパがお兄ちゃんに、日本のお勉強を教えることが目的でした。ところが、いつのまにかパパに、その日にあったことを報告したり、英語を教えてもらう時間になりました。
「今日は楽しかったかい?」
勉強会はパパのこのひと言で始まります。
「今日ね、ミスター・ブラウンがね・・・」
ソラは早速、オレンジ色のナップザックからノートを取り出しました。
「今日もミスター・ブラウンの似顔絵をかいていたんだね」
パパは笑いました。

「うん! そしたらね、これ、ホラ!」
ソラは体を乗りだして、ノートの「アイウエオ」をさしました。
「どれどれ・・・アイウエオ?」
「うん! アイウエオって言ったの! あとね、あとね、コレ!」
「おしょーゆ・・?」
「うん! ミスター・ブラウンがね、アイウエオ、おしょーゆって言ったんだよ!」
「そんなこと言ってないよ~」
お兄ちゃんがノートをうばい取りました。

「絶対に言った! ボク、ちゃんと聞いたもん」
こういうときのソラは強気です。絶対にゆずりません。
「アイウエオ、おしょーゆ、アイウエオ、おしょーゆ・・・。あ~、そっか! そうか! ソラはすごいなぁ!」
パパはおなかをかかえてゲラゲラ笑いました。

ニケ について

東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(学術博士)。読んだ人がちょっとだけハッピーになる言葉を奏でます。