『こやたちのひとりごと』
谷川俊太郎 文
中里和人 写真
アリス館
2023年6月刊
◆意識しないできた小屋がある
山里や田んぼ、海辺など、身近な場所に佇んでいる小屋。
私自身も小学校に通う通学路で、錆びたトタンでできた小屋をよく見かけていたことを思い出します。当時は「ボロボロだな~」と思いながらも、素通りしていたように思います。
きっと皆さんもこれまで視界には入っていても特に意識しないできた小屋があるのではないでしょうか?
今回ご紹介する絵本は、そんな小屋にスポットライトを当てた作品です。
小屋たちがもし人間と同じように何かを感じ、ひとり言を言っているとしたら、どんなことを言っているのでしょうか?
想像の中で繰り広げられるひとり言の数々。それらを聴いているとなんだか可愛らしくて笑みがこぼれてきます。
ある小屋は、いろんな種類のあり合わせの板をパッチワークのように継ぎ当てられた姿。その小屋は「僕を立ててくれた人はえらくない」と言っています。山里にポツンと立っているテントのような小屋は、「さびしくない、お日様が照ってるし、小鳥もくる」と言っています。
「人が入ってくるとくすぐったい」、「鍵をかけなくても風や子どもたちの遊ぶ声が入ってくる」そんな風に感じている小屋たちもいます。それぞれ小屋の姿形によって性格も違い、感じ方もまちまち。「いつだってここにるよ」と自己主張している姿もまた愛らしい。
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