目の前にくじ引き屋さんが見えた時、
「あっ!」
トモちゃんはおもわず声をあげてしまいました。
くじ引きのお店の向こう側、そこはもう屋台はなく、林になっているのですが、茶色いものがすっと横切ったのです。
ネコのように見えました。
しかも、あの姿は数日前に死んでしまった飼いネコのチャップにそっくりでした。
トモちゃんは迷わず、道をそれ、林へと向かいました。
「あれはきっとチャップの幽霊だわ。お祭りに連れてきたこともあるし、喜んでたから、きっと今日だけもどってきたのよ」
小さな声でそうささやきながら、どんどん進んでいきました。
神社の林は広く深く、お祭りの明かりも声もだんだんと薄くなっていきます。
「確かにこっちの方へ走っていったんだけどなあ」
ネコの姿は見えません。
少し不安になって振り返ると、屋台の明かりは随分小さくなっていました。
前方に目を戻すと、真っ暗な林が広がっています。
その奥の方に―――ポツンと明かりが見えます。
黒い木の影の合間に真っ白な光があるのです。トモちゃんは目を凝らしました。
「何だろう」