早速、瑠衣がおみくじ型のクッキーを作った。ココアパウダーを混ぜた生地で「大吉」だの「末吉」だの、文字が組みこまれている。
それをたいやきの中に入れ、焼き上げたら、できあがり!
ひと手間かかる分、値段も50円アップしてみたが、
「やった! われながら、センスあるぞ!」
ひと月も経たないうちに、店には行列。地域の新聞やローカルなテレビ番組で紹介されるやいなや、ますます人気が高まった。SNSでも、バッチリ紹介され、いまや海外のお客様も。
「ほらな、大吉ばかり入れたってとこが、いいだろ? 人は救いを求めているんだ」
奏多は、瑠衣に胸を張った。
「救いねぇ。ほんとかしら?」
「ほんとさ。今日だってーーー」
この店のたいやきに励まされて、舞台に立つことができたと、奏多に笑いかける少女がいた。
この町の小さな劇団の子らしい。縁起をかついでか、事あるごとに、たいやきを買いに来て、そのたび、新しい活躍の話を聞かせてくれる。