第三話 チョコレート
裏通りに、古びた店構えの駄菓子屋がある。
梅さんという名の、百歳に近いんじゃないかと思えるおばあさんが、一人で店番をしている。
近所の人たちは「あのおばあちゃん、いい加減、店じまいをしたほうがいいんじゃないの?」と心配するが、今のところ毎日、店は開いている。
だから卓哉も、毎日ここに寄り道して、百円チョコレートを買った。コンビニで買うチョコのほうが、ずっとおいしいけれど、この店だと「怪獣シール」のおまけがつくから。
卓哉にとって、目当てはシール。チョコのほうは、味にあきて、捨ててしまうことさえあった。
その日は、夏休み明けの始業式。お昼前に学校が終わり、卓哉はいつものように、駄菓子屋に飛んで行った。目指す百円チョコは、一個しか残っていなかった。
買おうとして腕を伸ばしかけたら、同時に、横から細い腕がのびてきた。