「あーあ。今日はついてないな」
別のお菓子を探していたら、梅さんが、
「すまないねぇ」
と、びっくりするほど優しく声をかけてきた。
「あの子はねぇ、あたしの幼馴染でねぇ」
「なに言ってんの。幼馴染って、同じくらいの年だよね? おばあちゃんと、あの子、百くらい違うように見えるよ」
卓哉が笑うと、梅さんも、つられて笑った。
でもまたすぐに、
「あの子は、あたしの幼馴染でねぇ」
と、繰り返した。
「大正時代のちょうど今日、大きな地震で死んじまったんだよ。たった五つでな。いっぺんでいいから、チョコレートってもんを食べてみたいって、いつも言ってたんだ。忘れようにも忘れられない」
その頃のチョコレートは、たいそうな贅沢品だったことを知って、卓哉の胸は熱くなった。
そして、梅さんが、なんで駄菓子屋さんになったのか、なんで店じまいをしないのか、も。