私が童話作家になった理由:たからしげるさん

◆自分も書いてみたい
3年やったら、もうこの仕事を手放したくなくなりました。そう思ったのも束の間で、数か月後、東京の本社に戻ってくるように異動命令が出てしまいました。
戻ってきて配属となった部署は、編集局文化部でした。文化部には映画、音楽、演劇、芸能、美術・・・と、いくつかのセクションがありますが、わたしが組み入れられたグループは読書班でした。しかも、児童書を中心に受け持つことになりました。
児童書つまり、子どもの本の情報をかき集めて、作家や画家や出版関係の人たちに取材して、記事を作る毎日が始まりました。

わたしが児童書などを書く作家になったのは、いつごろからだったかと振り返ると、きっかけはまさにこのときでした。とはいえ、叩けばほこりが出るばかりで、とてもじゃないけど打てば響くタイプではなかったわたしは、そのときもまだ、作家になろうとは思っていませんでした。

仕事柄、全国の児童書関連の出版社から手もとに集まってくる子ども向けの本を片っぱしから読んでいくうちに、こういう世界を自分でも書いてみたい、という気持ちが年々、強くなってきたのは、同じような年齢の子を持つ親だったからかもしれません。