がめ島うらしま館(7/14)

文・伊藤由美   絵・伊藤耀

7 ペナルティゲーム

足が、がくがく、ふるえます。
「助けをよばなくちゃ!」
美里ははうように玄関ホールまでもどり、声をしぼり出しました。
「だれか助けて!」

ホールはがらんとしていて、人の気配はまるでありません。
美里は自動ドアをぬけ、うらしま館から外に出ました。
来た時と同じ、おだやかな海の景色です。
ところが、向こう岸までの道は、とっくに、海水に飲みこまれていました。

「ああ、どうしよう! そうだ、ガイドさん!」
美里はうらしま館にかけもどり、受付のタブレットに飛びつきました。
プィン!
「何かご用ですか?」
「大変なんです! 大介君が水そうにさらわれました! 弟も行方不明です! どうしたらいいんですか!」
「大介様は、今、ペナルティゲームの最中です」
「ペナルティ?」
「はい、第三問をおまちがえになったので。ご様子をごらんになりたければ、大介様のアバターをおしてください」
「大ちゃんのアバター?」
「画面の右方に・・・」
なるほど、画面の片すみに美里、大介、新一のイラストが並んでいます。

美里は大介のアバターをおしました。
ガイドの顔が消えて、代わりに、水中でもがいている大介のすがたが映りました。
「おぼれてる! 何とかして!」
「では、道具をお選びください」

すると、画面に道具のイラストが並びました。
おにぎり、かいちゅうでんとう、アクアラング。
「アクアラング!」
ピコピコピン!
水中に本物のアクアラングやダイビングスーツが現れて、大介を包みました。
とたんに、大介は楽そうにおよぎ出しました。

伊藤由美 について

宮城県石巻市生まれ。福井県福井市在住。 『指輪物語』大好きのトールキアン。その上にトレッキー(「スター・トレック」ファン)でシャーロキアン(「シャーロック・ホームズ」ファン)と、世界3大オタクをカバーしている。

伊藤 耀 について

(いとう ひかる)1992年福井県福井市生まれ。仁愛大学人間学部心理学科卒。いつもはウサギばかり描いているが、ときどき、母親の童話に挿絵を描いている。福井市在住。創作工房伽藍で勉強中。