エルとくるみとソラ(2/7)

文・七ツ樹七香  

くるみとエルは、ずっといっしょに育ってきた。2年前のお別れのときまで。あのときエルはくるみより4つ年上の12才で、心ぞうの病気になって毎日ねむってばかりいた。そんなエルを家族みんなで心配した。

『くるみ、エルの具合が良くないみたいなんだ。ちょっと今日はおうちにいよう』
『でも、前からの約束なんだよ? 水族館行くって。アキちゃん、楽しみに・・・』
ある日曜日のこと。エルのことも心配だけれど、友だちとの約束をやぶるのも不安でくるみがいうと、お父さんはむずかしい顔をした。

『少しだけ行ってきたら? 気分てんかんになるかもしれないし。エルはわたしが見てるから』
お母さんのてい案に、くるみもうなずいた。エルを心配して、お父さんはエルのいるリビングで看病する日々が続いていたのだ。

『エル、大丈夫か?』
お父さんの問いかけに、エルはゆっくりとしっぽをふる。
『エル、すぐ帰ってくるからね』
くるみが顔を近づけると、エルは起き上がってくるみの鼻先に黒いかわいた鼻をよせた。エルとくるみの、いつもの「いってらっしゃい」の合図だ。だから、くるみは出かけた。

七ツ樹七香 について

(ななつきななか)熊本県在住 会社員勤務を経てフリーライター・(アマチュア)作家 新紀元社WEBサイト パンタポルタで記事・コラムを執筆するかたわら、WEBで小説を発表。公募活動にも力を入れる。『ピイのとんだ空』で日本動物児童文学賞 優秀賞。熊本県民文芸賞では小説部門を二年連続受賞。本賞で2019年に第1席を獲得した『ラスト・オテモヤン』は熊本日日新聞に全10回連載され好評を博す。本作は作品集収録とともに朗読CD化、熊本県内数カ所の図書館で視聴可能。 ほか、西の正倉院 みさと文学賞 佳作、集英社WEBマガジンコバルト がんばるorがんばらない女性小説賞 大賞など。 児童文学から一般文芸まではば広く手がけている。動物が大好き。犬と小鳥と暮らしている。著書を持つのが夢。