エルとくるみとソラ(3/7)

文・七ツ樹七香  

ソラはあいきょうのある犬だった。
人が話していると、トコトコとよってきて、ちょこんとこしを下ろして楽しそうに耳を動かしている。人がなにを話しているのか、聞いているような顔つきだ。
ソラは6才のりっぱな大人で、やんちゃそうな顔つきなのに性格はおとなしく、とてもかしこい犬だった。

「ソラはいい子だねえ! おりこうさん」
お母さんがほめるのをうれしそうに聞いて、ぶんぶんしっぽをふりまわす。満足そうに口を開けて笑う顔は、やっぱりエルににている。

でもエルはゆっくりしっぽをふるタイプだったので、そういうところはちがうんだなとくるみが考えていると、ソラがじっとこちらを見つめているのに気づき、ふいっと顔をそらす。
ソラは残念そうに部屋のすみに去っていった。すると、お母さんがそばにきてないしょ話をするようにそっとソラを指差した。

「ねえ、くるみ見て。ソラ、いつもあのボールをそばに置いてるの」
ソラは部屋のはしで、前にエルが使っていたクッションの上に丸くなっている。そのそばには、ソラの宝物だという水色のゴムボールがあった。

七ツ樹七香 について

(ななつきななか)熊本県在住 会社員勤務を経てフリーライター・(アマチュア)作家 新紀元社WEBサイト パンタポルタで記事・コラムを執筆するかたわら、WEBで小説を発表。公募活動にも力を入れる。『ピイのとんだ空』で日本動物児童文学賞 優秀賞。熊本県民文芸賞では小説部門を二年連続受賞。本賞で2019年に第1席を獲得した『ラスト・オテモヤン』は熊本日日新聞に全10回連載され好評を博す。本作は作品集収録とともに朗読CD化、熊本県内数カ所の図書館で視聴可能。 ほか、西の正倉院 みさと文学賞 佳作、集英社WEBマガジンコバルト がんばるorがんばらない女性小説賞 大賞など。 児童文学から一般文芸まではば広く手がけている。動物が大好き。犬と小鳥と暮らしている。著書を持つのが夢。