ハトのオイボレ、最後の冒険(6/8)

文・伊藤由美   絵・伊藤 耀

「何だろう?」
いやな予感がして、そちらの方角を注意していると、たくさんのカラスに追われて、トンビが、バサバサと、にげて行きました。
そして、すぐに、別の2羽が、もっと小さな鳥を追い回しているのが目に入りました。

小鳥は、ぬけた羽を、パラパラ、まき散らしながら、にげ回っていましたが、やがて、まっすぐ、こちらに向かって来ました。
「オイボレ君だ! カラスに追われてる!」
とっさに、チェシャは、ペデストリアン・デッキの、できるだけ目立つ場所に立ちました。

「ここだよ、オイボレ君!」
チェシャは、オイボレが自分を見つけて、急降下して来るのを待ちました。
そして、その後をわき目もふらずについてきたカラスに、かっこよく、パンチを決めたのでした。
打たれたカラスは、ギャアギャア、わめいて、にげようとしましたが、チェシャはにがしません。ピョーンと、ジャンプして、カラスの上に、どっかり、乗り、両手でつばさをおさえつけてしまいました。

「カワー! カワワワー!」
もう1羽は、後ろも見ずに、にげて行ってしまいました。
「早く行って!」
チェシャの声におされて、オイボレは、駅舎の壁や街灯のポールをあやうくすりぬけて、もう一度、急上昇しました。
今度は、迷うことなく、まっすぐに、南西をめざしたのでした。

「がんばれよ」
チェシャは、オイボレの姿が小さな点になって、消えてしまうまで見送ってから、
「ぼく、鳥はきらいなの。羽がシャゴワくて、食べにくそうだからね」
と、カラスから手を放しました。

伊藤由美 について

宮城県石巻市生まれ。福井県福井市在住。 『指輪物語』大好きのトールキアン。その上にトレッキー(「スター・トレック」ファン)でシャーロキアン(「シャーロック・ホームズ」ファン)と、世界3大オタクをカバーしている。

伊藤耀 について

(いとう ひかる)1992年福井県福井市生まれ。仁愛大学人間学部心理学科卒。いつもはウサギばかり描いているが、ときどき、母親の童話に挿絵を描いている。福井市在住。創作工房伽藍で勉強中。