ピイの飛んだ空(3/8)

文・七ツ樹七香  

こうなったら、もう秋斗(あきと)と父の勝利だった。
しかし、ことは一刻(いっこく)を争った。
父の力を借りて、秋斗はヒナのレスキュー体制を整えることにした。まずは500mlのペットボトルにお湯を入れてタオルでくるんだ。これで湯たんぽがわりになるらしい。夏ではあるけれど、こんな毛も生えていないようなスズメが生きのびるには、温度を上げてやらなければ命取りになるらしかった。

次に、ホームセンターが秋斗の味方になった。野鳥を育てるのに使うすり餌という飼料は、そこに売っているらしい。
「お父さん、早く! 急いで!」
「お前そう言ったってなあ、警察(けいさつ)につかまったら急ぐもなにもないんだぞ」
運転手をせかしながら、秋斗は気が気じゃなかった。小鳥のヒナはほんの数時間の放置で死んでしまうことだってあるという。あのちいさな生き物は、いったいどれくらいひとりでいたのだろう。

七ツ樹七香 について

(ななつきななか)熊本県在住 会社員勤務を経てフリーライター・(アマチュア)作家 新紀元社WEBサイト パンタポルタで記事・コラムを執筆するかたわら、WEBで小説を発表。公募活動にも力を入れる。『ピイのとんだ空』で日本動物児童文学賞 優秀賞。熊本県民文芸賞では小説部門を二年連続受賞。本賞で2019年に第1席を獲得した『ラスト・オテモヤン』は熊本日日新聞に全10回連載され好評を博す。本作は作品集収録とともに朗読CD化、熊本県内数カ所の図書館で視聴可能。 ほか、西の正倉院 みさと文学賞 佳作、集英社WEBマガジンコバルト がんばるorがんばらない女性小説賞 大賞など。 児童文学から一般文芸まではば広く手がけている。動物が大好き。犬と小鳥と暮らしている。著書を持つのが夢。