創作紙芝居(朗読動画)「おには そと ふくは うち」

文と絵・えもりなな

この作品は、保育園の先生方から節分の行事に合わせ、紙芝居創作を依頼されたことをきっかけで生まれました。

以前、2歳児の女の子と遊んでいた時、草むらに小さな鬼がいるという見立て遊びをしたことがありました。
小さな鬼が草むらに隠れている設定で、「あっ! いたよ!」と私が声をかけ両手で捕まえる仕草をすると女の子はとても喜び、大はしゃぎでした。

それを何度も繰り返すうちに、大きな鬼がいたら怖いかも、と思いつき、私が「大きな鬼が来た~!」と怖がってみると、その女の子も一緒になって怖がりました。
楽しかったその遊びの記憶を思い出し、それをお話の基点に用いました。

普段、園庭で遊んでいる時、子どもたちは枝を折ってみたり、葉っぱを破いてみたり、お花を摘んたみたりする姿が見られます。
また捕まえてきたダンゴムシやアリを大事にバケツに入れて持ち歩く姿、虫かごに入れたかたつむりをじっくり観察する姿、そんな日常の子どもたちの姿からもお話のヒントを得ました。

時にはいたずらをしたり、友だちに意地悪してみたり・・・そんな姿もあります。
そういう時の子どもの姿を「鬼の子ども」に投影し、反対に優しい時は「小さな女の子」の姿でそれを表現しました。

主人公のまーくんは、赤鬼にやってくるとおびえて何もできなくなってしまいます。でも、その怖さを乗り越えて、豆をまいて鬼を追い払うという勇気ある行動に出ます。
このお話を通して人の心に住む邪、魔、弱さと呼ばれるネガティブなものを克服する一場面を伝えています。

最後に強い心、優しい心を持つ子に育って欲しいという願いを込めてしめくくりとしました。
2月4日は旧暦では新年にあたります。その前日に「魔を滅する」という意味から豆で魔を払い、良い年を迎えられますように。
古来日本人が節分の行事に込めた思いについて、改めて思いを馳せる機会になれば幸いです。

えもり なな について

江森 奈々(えもり なな)1985年神奈川県生まれ。千葉県在住。幼少期より母から良質な絵本を与えられて育つ。幼い頃から絵を描くことが得意で、小学生の頃は漫画を描く。中学生になると美術部に所属し油絵を始める。灰谷健次郎の「兎の目」に感銘を受け、10代は日本や世界の児童文学を読みふける。現在、保育士をしながら絵本や童話、紙芝居の創作、読み聞かせを行っている。画家・イラストレーター、モデルとしても活躍中。絵本は1500冊以上読破。2023年be京都にて初のプチ個展を開催。パレットクラブスクール19期絵本コース卒業。トムズボックス2019冬季ワークショップ修了。 『絵本作家になるには、絵が描けないと無理ですか』(CATパブリッシング)の挿絵を一部担当。 ●YouTube:【なないろ本屋/7's BOOKSHELF】 ●Instagram:【nana_museum】