「ごめんな。昨日のやつ、おまえがよろこぶと思ったんだよ・・・…本当に」
茶色くて丸っこい、つやつやした虫。テントウムシぐらいの大きさで、おあつらえむきのエサだと考えていたのにとんだ目にあわせてしまった。
やがては野性に帰るピイだ。いろんなものを食べたほうがいいにちがいないし、秋斗(あきと)が母親として、ちゃんと食べられるものを教えなければいけない。それが、こんなうら目に出ようとは・・・。
少し落ちこんだけれど、秋斗には今日も朝一の仕事が待っていた。
庭でピイの朝ごはんの調達をしなくてはならない。
秋斗は「待っていろよ」と声をかけて、おいしい虫を求め、勇んで庭に飛び出していく。
ピイが家にきて、もうすぐ10日。
巣立つまで、もうひと息のはずだった。
(本作品は「第30回日本動物児童文学賞」優秀賞受賞作を一部平易に改稿したものです)