がめ島うらしま館(3/14)

文・伊藤由美   絵・伊藤燿

3 カニつり

かれこれ、1時間以上、およいだでしょうか。
「おねえちゃん、寒い。ぼく、もう、上がる」
新一のくちびるはブドウ色でした。
「うん、あたしも」
美里もすっかり冷えていました。
「ああ、腹がへった! みーちゃん、しんちゃん、何か食いに行こう」
大介も浜に上がってきました。

美里たちは洗い場の水道で砂を洗い落としてから、浜茶屋に入りました。
浩一はとうにもどっていて、友人たちと縁台にすわり、こそこそ、わらいながら、ケータイをいじっています。
3人に気づくと、浩一はビーチタオルを投げてよこしました。

「何でも注文しな」
浜茶屋のよしずにはジュース、かき氷、ところてんなどのはり紙がありましたが、3人はそろって、「ラーメン!」
あつあつのラーメンで、やっと、体が暖まると、大介は「カニつりに行こう」と言い出しました。

「浩一、バケツ、くれ。あと、するめな」
「サンダル、はいて行けよ。海に落ちるんじゃねえぞ」
「わかってる」
大介は浩一の手からバケツをひったくると、美里たちをうながして、浜茶屋を出ました。

伊藤由美 について

宮城県石巻市生まれ。福井市在住。 ブログ「絵とおはなしのくに」を運営するほか、絵本・童話の創作Online「新作の嵐」に作品多数掲載。HP:絵とおはなしのくに

伊藤 耀 について

(いとう ひかる)福井県福井市生まれ。福井市在住。10代からうさぎのうさとその仲間たちを中心に絵画・イラストを描き始める。2019年からアールブリュット展福井に複数回入賞。2023年には福井県医療生協組合員ルームだんだん、アオッサ展望ホールその他で個展開催するほか、県内アールブリュット作家展に出品するなど、活動の幅を広げている。現代作家岩本宇司・朋子両氏(創作工房伽藍)に師事。HP:絵とおはなしのくに