「おい、大介。島には行くな」
後ろから浩一の声が追いかけてきます。
「うっせいな。分かってるって!」
大介は、ぶつぶつ、言いながら、砂遊びや日向ぼっこをしている人々の間を、のしのしと歩いて行きます。
美里と新一はその後を、ペタペタ、ついて行きました。
海水浴場の西側には大型タンカーも出入りする港があって、丸い、巨大な石油備蓄タンクが並んでいます。
その辺り、夕暮れには美しい夕日がしずみました。
一方、東側には、はるか白山連峰(れんぽう)から連なる山々がなだらかな岬(みさき)となって、日本海への長い旅を終えていました。
大介の向かったのは、その岬(みさき)から海へと張り出す突堤(とってい)でした。
何人ものつり人がさおをたれています。
「ねえ、カニ、どうやって取るの?」
大介の速足をけんめいに追いかけながら、新一は聞きました。
「すぐ、分かるって」
突堤(とってい)に着くと、3人におどろいて、イソガニたちが岩の間に、さわさわと、かくれていきました。
大介はしゃがんで、バケツの中からするめとタコ糸を取り出し、糸の先にするめの切れはしを、しっかり、結び付けました。