がめ島うらしま館(3/14)

文・伊藤由美   絵・伊藤燿

「こうしてな」
と、大介がそれを岩の間にたらすと、間もなく・・・。
「かかった!」
大介が糸を引き上げると、その先に、するめをはさみでつかんだまま、カニが、ぶらんと、ぶら下がっていました。

「わあ!」
美里も新一も、さっそく、大介にならって、カニつりをし始めました。
取れること、取れること。
「カニってばかだね」
「うん、大ばかなんだ」
バケツはすぐにいっぱいになりました。
「これ、食べられる?」
「食べない」
ともあれ、楽しいのでした。

しばらくして、「ああ、もう、バケツに入らないから止めよう」と大介。
「じゃ、浜にもどる?」
大介は、ちょっと、考えて、
「島、見てみる? かめの形の島」
と、聞きました。
面白そうでした。

3人はカニが、ガサガサ、言っているバケツをその場に残し、突堤(とってい)をもどって、海水浴場とは反対側のいそに下りました。
イソギンチャクがゆれている潮だまりを、パチャパチャ、わたると、すばしこい小魚たちがおどろいてにげていきます。
3人はがけ下の道に出ました。
道は、ときどき切り通しやトンネルに出会いながら、うねうねと続き、小さな村の船着き場に通じていました。
コンクリートで固められた波打ち際に、小船が並んでいます。

伊藤由美 について

宮城県石巻市生まれ。福井市在住。 ブログ「絵とおはなしのくに」を運営するほか、絵本・童話の創作Online「新作の嵐」に作品多数掲載。HP:絵とおはなしのくに

伊藤 耀 について

(いとう ひかる)福井県福井市生まれ。福井市在住。10代からうさぎのうさとその仲間たちを中心に絵画・イラストを描き始める。2019年からアールブリュット展福井に複数回入賞。2023年には福井県医療生協組合員ルームだんだん、アオッサ展望ホールその他で個展開催するほか、県内アールブリュット作家展に出品するなど、活動の幅を広げている。現代作家岩本宇司・朋子両氏(創作工房伽藍)に師事。HP:絵とおはなしのくに