ぜんぜん不思議じゃなかった3日間(6/15)

文・朝日千稀   絵・木ナコネコ

「さあ、行くぞ!」
と、気合を入れた時だった。
「わっ!」
背中に走る衝撃に、体がのめった。
なにが、起こった?
ふり向くと、人が、しゃがみこんでいる。
「どうしました?」
あたしの背中に倒れこんできた人は、ぐったりとして動かない。
かなり年配の方なのか、短く刈られた髪は、真っ白だ。

「大丈夫、ですか?」呼びかけると、
「み、み、水」と、か細い声が言う。
「み、水、ですね」どうしようと、策作じいさんの姿をさがす。
が、見当たらない。
もう、肝心な時に、どこ行っちゃったんだと、怒っている暇もないから、飲みかけの水を差し出すと、
「んぐんぐんぐんぐ」
その人は、一気に飲んだ。
「どうぞ」
塩アメも、差し出してみる。

その人は、バリバリとかみ砕いた。
かなり、元気をとりもどしている。
「ふーっ、生き返った!」
もの凄い回復力だと、感心しつつ、よくよく見れば、あれっ、この人・・・。
策作じいさんの同級生で、去年、この世を去ったという、自転車屋のじいさんだ!
腕に、ぶわっと、鳥肌が立つ。

朝日千稀 について

(あさひ かづき)福井県福井市在住。3猫(にゃん)と一緒なら、いつまでもグータラしていられる

木ナコネコ について

(きなこねこ)福井生まれ、大阪住まい。福井訛りの謎の関西弁が特徴。猫と珈琲と旅が好き。