続く言葉は、「あの世には持っていけない」、だろうか? ちょっとしんみりしてしまう。
「ありがとうございます」
「ほな、さいなら」
「さようなら・・・」
去りかけるじいさんに心の中で呼びかける。
あたし、『魂送り』、しっかりしますから。
おじいさんの魂、お見送りしますから。
「せや、まだ、あのアメあるか?」
「はい、どうぞ」
自転車屋のじいさんは、差し出した袋の中から、ごっそりと掴み出した塩アメをポケットに詰め込むと、去って行った。
なにも、そこまで、持っていかなくても!
しんみりが消えてゆき、入れかわるように、疑問が湧き上がる。
それにしても・・・。
もうすでに死んでいるのに熱中症で死にかけて、水と塩アメでよみがえり、おかげで生き返ったとヒスイを進呈してくれるなんて、なんて、リアルに存在してるんだ!
それって、おかしいよね?
おかしくないか?
ユーレイなのに、食べる、飲む、ヒスイを探すなんてこと、平気でしちゃってるなんて。
生者か死者か、区別つかん程、普通におる。
それが、盆の、花盛り町大字細八字猪甲乙。
策作じいさんの言葉が、よみがえり、
『事実は小説よりも奇なり』って言葉が頭をよぎった。