つなぐ(5/10)

文・藤 紫子  

(ホームに落ちてしまってはいないだろうか。それとも、掃除の方がゴミにしてしまってはいないだろうか)
よくない考えがつい、頭にうかびます。
見つからないかもしれないという気持ちがぶくぶくとふくらみます。

「いやいや、あきらめるわけにはいかん」
おじいさんは自分をはげましながら、ほうぼうを探しつづけました。
電車がとうちゃくするたびに押し寄せる、たくさんの人たちのなかには、おじいさんを不思議そうに見ていく人もいます。
じゃまだと言わんばかりに、舌打ちしていく人もいます。
でも、おじいさんは気にもとめず、一心不乱に探しました。

藤 紫子 について

(ふじのゆかりこ) 札幌市生まれ。札幌市在住。季節風会員。小樽絵本・児童文学研究センター正会員。12年ほど町の図書館員をしていました。子ども向けのお話と好き勝手な詩(https://ameblo.jp/savetheearthgardian/entry-12601778794.html)を書いています。自然・ドライブ・博物館・棟方志功氏の作品・源氏物語・本(本なら問題集でも!)が好き。