(ホームに落ちてしまってはいないだろうか。それとも、掃除の方がゴミにしてしまってはいないだろうか)
よくない考えがつい、頭にうかびます。
見つからないかもしれないという気持ちがぶくぶくとふくらみます。
「いやいや、あきらめるわけにはいかん」
おじいさんは自分をはげましながら、ほうぼうを探しつづけました。
電車がとうちゃくするたびに押し寄せる、たくさんの人たちのなかには、おじいさんを不思議そうに見ていく人もいます。
じゃまだと言わんばかりに、舌打ちしていく人もいます。
でも、おじいさんは気にもとめず、一心不乱に探しました。