戦地で、おじいさんの心を支えてくれただけではありません。
戦争が終わって家に帰りついたときに、ばく撃で清枝さんが亡くなっていたことを知って、深い悲しみの底につき落とされたときも、おじいさんの心を支えてくれました。
清枝さんのお守りは、一人きりで生きてきたおじいさんと、長い年月を一緒にすごしてきたのです。
いよいよ電車の出発じこくになったときです。
改札とホームを行き交う人たちのすきまから、何かが目に入りました。
白い小さな物です。
ホームから改札へ、十段くらいある階段を上ぼりきった、手すりのところにあります。
はっとしたおじいさんは、とびらを閉める合図が鳴るなか、電車を飛びだしました。
心がざわつきます。
白い物だけに目をこらしながら、階段に近寄りました。