「昨日、ぼくは幸太くんの話を聞いて」
昨夜、いや、あれは、もう今日だったか?
黒岩さんと、いろんな話をしたような記憶は、ある。
はっきりと覚えてないけど、寝入りばな、捜し猫の話もしたようで、黒岩さんは、ポスターの白猫は、パピだと直感したそうだ。
「この季節、パピの居そうな場所はだいたいの見当はつく。展望台の周辺か、鎮守の森か。どちらにも、パピの好物、マタタビの木があるんだ。いままでにも、実を食べて、死んだように眠ってしまったことがあったんだ」
と黒岩さんは語った。
ということは、
「・・・黒岩さんは、眠っているパピをここに連れてきたことが?」
「そうだね、何回か。仕事柄、少し注意をしていれば、捜し猫情報や捜し犬情報、その他いろんな情報をつかまえることができるからね」
ぼくたちが話しているのを黙って聞いていた山野辺さんが、
「そうだったのか・・・、金太が運んでくれていたのか・・・」
つぶやいて、黒岩さんに、ありがとうと頭を下げる。が、黒岩さんには、その様子が見えないようだ。反応することもなく、語り続ける。
「しかし、パピも今年で18歳の老猫だ。もしものことも想定した・・・」
「ぼくとそんなに変わらないのに、老猫、なんですか?」
「猫は人の何倍も早く年をとる」
「見た目は、かわいいままなのに?」
「ああ、かわいいままなのに。・・・あああ、幸太くん、ほら、これでちんして。大丈夫だ。心配はいらない。パピは、こんなに元気になった」
黒岩さんはパピを見て目を細め、また、言葉をつなぐ。
「夜明けとともに、ポスターを確認し、自宅の電話番号は記憶しているが、連絡先が携帯だったので、登録するのももどかしく、ポスターをひっぺがし、まずは、展望台に行ってみた。そこにパピはいなかった。だから、急いで・・・」
パピは、ぼくたちが捜しに行った鎮守の森で倒れていたそうだ。