パピも見つかり、思い残しもなくなった山野辺さんだが、まだ、高校生の姿で、ここにいる。
「山野辺さん、山野辺さんの実体、と言うのも変ですね、・・・眠っている山野辺さん、おかあさんに起こしてもらってもいいですか?」
「うん」
「黒岩さん、おかあさんに、頼んでください」
「了解!」
と玄関に向かった黒岩さんは、戻って、ぼくに耳打ちをした。
「ぼくも会いたかった。あの頃のみーちゃんに」
去っていく黒岩さんの、大きな背中を見ながら、思う。
山野辺美好さんが、
大人になった山野辺さんが目をさましたら、
ここにいる山野辺さんとは、さよならだ。
泣きそうだけど、ぼくは、泣かない。
すごく、すごくさみしいけれど、
笑って、さよならと言おう。
でも、そのタイミングは、いつなのだろう?
いや、タイミングなんて、測れない。
それは、たぶん、突然やってくる。
山野辺さんとの別れも、さっきのパピみたいに・・・。
ぼくは、じっと山野辺さんに視線を向ける。
山野辺さんも、ぼくに視線を向けている。
別れの時は、刻々と近づいている。
ぼくは、笑顔を顔に貼りつける。