しばらくすると、裏庭に、きれいなおねえさんが現れた。
白いシャツに、スリムなジーンズ。
長い髪は、後ろでぎゅっと結ばれている。
そして、腕の中にはパピが、すとんと落ち着いている。
おねえさんは、ゆっくりこちらにやってきて、猿神さんに向き合った。
パチパチとまばたきを繰り返す猿神さんのみぞおちに、
「グッジョブ!」
バスッとこぶしを入れる。
「ありがとう!」
チャッピーには、キスを。
「ありがとう!」
ぼくには、パピ付きのハグを!
「ありがとう!」
ほほを染め、もじもじしている黒岩さんには、頭をさげた。
おねえさんは、みんなにお礼を言ってくれた。
けれど、一番の功労者はパピだろう。
ほら、おねえさんの鼻の頭、小さな歯型がくっきりとついている。
たぶん、パピにかぷっとやられ、痛くて飛び起きたんだ。
だよね、パピ?
パピはその後、
12年間元気で暮らし、
30歳まで生きることになる。
でも、この時のぼくたちは、まだ知らない。