ぼくたちは夏の道で(5/12)

文・朝日千稀   絵・木ナコネコ

「ところで、」
と黒岩さんが、ぼくの顔をのぞきこむ。
「はい?」
「前言撤回するよ! 幸太くんと話していたら、なんだか楽しくなってきた」
「わーっ! よかったです!」

「それに、幸太くんは、若い頃のぼくに、ちょっと似てるような気がするし」
「えっ? どこが、ですか?」
「見た目で言うなら、その細っこい体つきや、その、ちょっと下がった眉とか。高校時代のぼくに似ている。ぼやけた集合写真の中の、だが」
「ありがとうございます」
で、いいのかな?

「それに、猿神先輩のペースに巻きこまれて、助手にさせられてしまうような、ちょっと押しの弱いところとか」
「お言葉を返すようですが黒岩さん、猿神さんのペースに巻きこまれるのって、押しが弱いとか強いとか関係ないような気がします」
「一理あるな。確かに、先輩と関わって被害にあってない人間は、見たことがない。う~ん、あいつに・・・」
黒岩さんは、指を折ろうとして、途中で止めた。
「両手両足、全部の指を使っても、数え切れない!」

ぼくたちが、大声で話していても、笑っていても、猿神さんは眠っている。
寝顔が、子どもみたいだと言って、ぼくたちは、また、笑った。
猿神さんと黒岩さん。
ふたりには、今日、出会ったばかりなのに、ずっと前から、知っているように思えてくる。

朝日千稀 について

(あさひ かづき)福井県福井市在住。3猫(にゃん)と一緒なら、いつまでもグータラしていられる

木ナコネコ について

(きなこねこ)福井生まれ、大阪住まい。福井訛りの謎の関西弁が特徴。猫と珈琲と旅が好き。