ぼくたちは夏の道で(7/12)

文・朝日千稀   絵・木ナコネコ

7 いつもの場所

「チャッピー、きみはどうする?」
聞き終わるまえに、チャッピーが先にたつ。
ありがとう。一緒に来てくれるんだ!

ぼくたちは、細い路地を歩いた。
アスファルトが少し熱をおびてきたので、チャッピーを抱き上げる。
やがて、家並みがとぎれ、辺りに、水田が現れた。広がる水田の中、まっすぐに通る一本道をゆくと、こんもりと茂る木々をバックに、鳥居が立っている。
ここは、鎮守の森?
猿神さんの家を出てから、30分ほど歩いただけだ。
なのに、別世界への入り口のような雰囲気がただよっている。

「山野辺さん」
「なに?」
「この鳥居、くぐるんですか?」
「うん」
「昼なのに薄暗い・・・」
「怖いのか?」
片眉をぴくりと上げて聞く山野辺さんに、
「まったく怖くないですっ!」
ぼくは、ちょっと見栄をはる。

「それなら、ついて来てほしい。入り口は、うっそうとしているけど、祠の辺りは、明るくて、気持ちのいい場所だから」
「はい」
鳥居をくぐったところで、
「エエエッ」
腕の中で、チャッピーが、ぼくの胸を軽く押す。

「わかったよ。おりたいんだね」
抱いていた手をゆるめると、チャッピーはぽんと飛んで着地した。
止める間もなく、素早い動作で、木々の奥へと姿を消した。

朝日千稀 について

(あさひ かづき)福井県福井市在住。3猫(にゃん)と一緒なら、いつまでもグータラしていられる

木ナコネコ について

(きなこねこ)福井生まれ、大阪住まい。福井訛りの謎の関西弁が特徴。猫と珈琲と旅が好き。