ソラはあいきょうのある犬だった。
人が話していると、トコトコとよってきて、ちょこんとこしを下ろして楽しそうに耳を動かしている。人がなにを話しているのか、聞いているような顔つきだ。
ソラは6才のりっぱな大人で、やんちゃそうな顔つきなのに性格はおとなしく、とてもかしこい犬だった。
「ソラはいい子だねえ! おりこうさん」
お母さんがほめるのをうれしそうに聞いて、ぶんぶんしっぽをふりまわす。満足そうに口を開けて笑う顔は、やっぱりエルににている。
でもエルはゆっくりしっぽをふるタイプだったので、そういうところはちがうんだなとくるみが考えていると、ソラがじっとこちらを見つめているのに気づき、ふいっと顔をそらす。
ソラは残念そうに部屋のすみに去っていった。すると、お母さんがそばにきてないしょ話をするようにそっとソラを指差した。
「ねえ、くるみ見て。ソラ、いつもあのボールをそばに置いてるの」
ソラは部屋のはしで、前にエルが使っていたクッションの上に丸くなっている。そのそばには、ソラの宝物だという水色のゴムボールがあった。