次の日には、もう、パカパカと、馬に乗ったご家来衆が村にやってきました。
やりや刀をたずさえ、よろい、かぶとに身を固めた、いかにも強そうなおさむらいが5人。
「安心せい! わしらでオニを退治してくれるぞ! 祝いの用意をして、待っておれ!」
「へへえ!」
人々は、深々と頭を下げました。
そして、おさむらいたちが山道を登って行くのを、たのもしげに、見送りました。
「んだら、みなの衆、おらの家さ来て、うたげの用意ば助けてけらいん」
庄兵衛のかけ声に、人々は、「よっしゃ!」と張り切り、庄兵衛の家で、お祝いの準備をし始めました。
ところが、いつになっても、おさむらいたちは帰ってきません。
そのうち、空模様があやしくなってきました。
ぽつりぽつりと、雨も降り始め、やがては、重く雲がたれこめて、昼だというのに真っ暗になりました。
ピカピカッ! ドドドーン!!
かみなりが鳴りひびいたかと思うと、ゴオーッと、それはそれはおそろしい風の音。
そして、ばけつをひっくり返したようなはげしい雨。
「なんだべや・・・?」
村人は、みな、ちぢこまって、雨にけぶる山を見やりました。
あらしの一夜が明けて、庄兵衛は、すっかり、冷えてしまったごちそうを前に、ぼんやり、座りこんでいました。
そこへ、バタバタと、村人がかけこんで来ました。
「名主様、早く、見さ来てけらいん!」
庄兵衛がついて行ってみると、入り会いの草地に、おさむらいたちのやりや刀、よろいなどが、ばらばらと、散らばっていたのでした。