と、その時、
「あーれー! 助けてー!」
と、頭の上から、ハツさんの悲鳴がふってきました。
見ると、白いつばさが強風にあおられて、クルクルと、飛ばされて行きます。
「大変だ! 多田君、早く、車を!」
「はい、先生!」
車の運転ができないコスモ博士は、多田君の自家用車に飛び乗って、ハツさんを、町はずれまで追いかけて、回収したのでした。
スタングラには、オン、オフのめもりのほかに、空を飛ぶためのGボタンもつけ加えられていました。
でも、ハツさんがそれを使って、ちゃんと飛べるようになるには、少し、時間がかかりました。最初の日のように、風に飛ばされないためには、練習が必要だったのです。
「母さん、がんばって、羽ばたいてください! 風を読むんです! いや、そうじゃなくって!」
ハツさんが、糸の切れたたこのように吹き飛ばされるたび、コスモ博士と多田君は、多田君の車を飛ばして、追いかけました。
でも、もともと、水泳の得意だったハツさんは、間もなく、とても上手に飛べるようになりました。
「さすがは母さん! うまいもんだ!」
「でも、白鳥が空で平泳ぎをしているってのも、みょうなもんすね」
「ふうむ。今度はクロールを始めたぞ」
「自由自在っすねえ。次は背泳ぎかな?」
「母さんの一番得意なバタフライだ、あれは」