ところが、何日もたたないうちに、朝ごはんの席で、ハツさんが、「もう、飛ばない」と言い始めました。
「つばさはクローゼットにしまいましたよ」
「え、どうしてですか? とても気に入っていたじゃないですか、空のお散歩を」
コスモ博士は、コーヒーを飲む手を止めて、ハツさんの顔をのぞきこみました。
ハツさんは、はあっと、肩を落としました。
「だって、町の人たちが、私を指さして、笑うんだもの」
そりゃそうですよね、頭の上を、平泳ぎや、バタフライで飛んでいる、変な鳥がいれば。
「そんなこと、気にしなくていいんですよ。飛ぶ時に、スタングラをオンにすればいいんですから」
「あ、そうだった! そうすれば、だれにも見えないんだったわ! じゃ、もうひとっ飛び、してきますよ!」
ハツさんの声ははずみます。
さっそく、クローゼットからつばさを取り出して背負い、スタングラのスイッチをオンにしました。
たちまち、ハツさんのすがたは消え、パサリっと、軽い羽音がして、あとは静かになりました。
コスモ博士は、ふふふっと、笑って、残りのコーヒーを飲み干しました。