ひとりだけでバスにのる不安に、またしかられるかもしれないという不安が足されて、チャン小熊ねずみの不安はとてつもなく大きなものになっていました。
不安な心をおちつかせるには、ボールつきしかありません。
チャン! チャン! チャン! チャン!
バスの中にボールをつく音がひびきわたりました。
ボーン。
1回だけボンボン時計がなる音がしました。
「もう9時半だ」
イノシシのうんてんしゅさんが、うんてん席のよこにかけられた大きなボンボン時計をゆびさして言いました。
「お客さん、もうまてませんよ。バスは九9時半にここのバスていを出ぱつしなければいけないのですからね」
ねむっていたヤマネのおじさんがかた目を開けてチャン小熊ねずみをじろりと見て、大きな声で言いました。
「そこのボールをついている子ねずみ君! ええと、君の名前は何だい?」
チャン小熊ねずみは小さな声で言いました。
「チャン小熊ねずみです」
「そうか、ではチャン小熊ねずみ君。私はヤマネおじさんだ。君もスズランびょういんに行くのだね? どこか悪いのかな?」(次のページに続く)