「ああ、あの枝に止まって、ちょっとでも休めたらな」
でも、一度休んだが最後、二度と飛び上がることはできないでしょう。
「何が何でも、飛び続けなくちゃ!」
その時、
「あぶないじゃない!どこ、見てるの!」
と、けわしい声がして、すぐそばを、何か、大きいものがすりぬけました。
見ると、自分の倍もあるマガモでした。
「グエー、グエー! どうしたんだい!?」
近くの仲間です。オイボレは、うっかり、マガモの群れにまじってしまったのです。
「変な鳥がいるよ、ママ! ぼく、あぶなく、ぶつかるところだったよ」
「何だって! ちょっと、場所を変わりなさい」
マガモのママが、子どものマガモの代わりに、オイボレのそばにやってきました。
「おやまあ、これはおどろいた! ドバトじゃないか!」
マママガモがさけぶと、
「グエー! ドバトだって」
「グエー! ドバトだってさ」
「え、レースバトじゃなくて?」
「ドバトって何?」
と、伝言ゲームのように、群れに言葉が広がって行きました。
「町のハトが、何だって、こんなところを、うろうろ、飛んでいるんだい? わたりでも始めるつもりかい?」
オイボレはだまっていました。
うっかり、余計なことを口走って、この図体の大きいママをおこらせ、体当たりでもされたらおしまいです。
それより何より、飛んでいるだけでせいいっぱい。話す気力もなかったのです。