「あらら、だんまりかね? 失礼な!」
だまっていたって、やはり、おこらせました。
「あたしたちは、遠い、寒い国から、はるばる、海をこえ、山をこえ、何日もかけて、ここまで旅して来たんだ。おまえのような、人間の食べ物をあさり、苦労もせずに、のうのうと暮らしている鳥とはちがうんだよ。ここまで来るのだって、とちゅう、どれだけの仲間を失ったことか!このあたりはハンターがいないから、油断して、低めに飛んだのが間ちがいだったよ。おまえのせいで、あやうく、もう一人、若い子を失うところさ!」
「私たちが、苦労もせずに、のうのうと暮らしているだって!」
マガモのひどい言葉に、オイボレはカッとなって、急に、力が出ました。
「そっちこそ失礼な! おまえたちはおまえたちで飛べばいいじゃないか! こっちのじゃまこそ、しないでほしいもんだ!」
オイボレは、マガモの群れからはなれようとしましたが、運の悪いことに、マガモの行き先は、オイボレの目指している方向と、ぴったり、重なっていました。
マママガモは、ちっぽけなハトが堂々と言い返したので、ちょっと、びっくりしたようでしたが、
「何も、おまえのじゃまをしようっていうんじゃないよ。ただ、一言、あやまってくれればいいんだ。そんなにいきり立つことはないじゃないか」
と、ちっとも、はなれて行こうとしません。
どうやら、オイボレがふつうのハトの飛ばないコースを飛んでいることに、とても、興味を持ったようすなのです。仕方なく、うるさいママを追いはらおうと、
「蔵王に・・・、太陽王に会いに行くところなんだ」
と、手短かに、事情を話しました。