次の朝、バタートーストとコーヒーを前に新聞を読んでいたヨハンソンさんは、読者の投稿欄(とうこうらん)を見て、
「あれ、ごらんよ、これ。面白い記事がのっているよ」
と、ソファで箱座りをしているチェシャに話しかけました。
「見出しがけっさくなんだ。『イヌワシ、ネコとおしゃべりか?』だって」
ヨハンソンさんはくつろいで笑い、おいしそうにコーヒーをすすりました。
そして、座り直して顔を洗い始めたチェシャに言いました。
「いいかい、読むよ。
『昨日、仙台駅のペデストリアン・デッキにイヌワシが降り立った。イヌワシは、通常、日本アルプスなどの高山に生息する猛禽類。このような町中に現れるのは非常にめずらしく、多くの市民が目げきし、シャッターを切っていた・・・』
そのあと、たまたまそばにいたネコと、まるで、仲良くおしゃべりしているようだったっていうんだよ。ありえんよなあ」
ヨハンソンさんは、ワハハっと、笑いましたが、ふと、新聞の投稿写真を見て、首をかしげました。
「それにしても、このネコ、おまえによく似ているなあ」
ヨハンソンさんは、新聞からチェシャ、チェシャから新聞へと、何度も目を通わせました。
チェシャの方は、何食わぬ顔で、今は、お腹をなめています。
とうとう、ヨハンソンさんは、
「おまえに人間の言葉が分かったらなあ。そしたら、ほんとに、たくさん、面白い話が聞けるだろうに」
と、ため息まじりに、新聞のページをめくろうとした。
でも、やっぱり、気になって、チェシャの方に身を乗り出して、
「これって、本当に、おまえじゃないの?」
と、たずねました。
チェシャは、ただ、ンニャーっと、鳴いただけでした。