「何だろう?」
いやな予感がして、そちらの方角を注意していると、たくさんのカラスに追われて、トンビが、バサバサと、にげて行きました。
そして、すぐに、別の2羽が、もっと小さな鳥を追い回しているのが目に入りました。
小鳥は、ぬけた羽を、パラパラ、まき散らしながら、にげ回っていましたが、やがて、まっすぐ、こちらに向かって来ました。
「オイボレ君だ! カラスに追われてる!」
とっさに、チェシャは、ペデストリアン・デッキの、できるだけ目立つ場所に立ちました。
「ここだよ、オイボレ君!」
チェシャは、オイボレが自分を見つけて、急降下して来るのを待ちました。
そして、その後をわき目もふらずについてきたカラスに、かっこよく、パンチを決めたのでした。
打たれたカラスは、ギャアギャア、わめいて、にげようとしましたが、チェシャはにがしません。ピョーンと、ジャンプして、カラスの上に、どっかり、乗り、両手でつばさをおさえつけてしまいました。
「カワー! カワワワー!」
もう1羽は、後ろも見ずに、にげて行ってしまいました。
「早く行って!」
チェシャの声におされて、オイボレは、駅舎の壁や街灯のポールをあやうくすりぬけて、もう一度、急上昇しました。
今度は、迷うことなく、まっすぐに、南西をめざしたのでした。
「がんばれよ」
チェシャは、オイボレの姿が小さな点になって、消えてしまうまで見送ってから、
「ぼく、鳥はきらいなの。羽がシャゴワくて、食べにくそうだからね」
と、カラスから手を放しました。