「クゥククッ! してやったぞ! トンビもカラスも、出しぬいてやった! 私も、まだまだ、捨てたもんじゃないぞ!」
オイボレは、高度を上げながら、ぐんぐん、飛んで行きました。
町を過ぎて、目の下には、刈り取り後の田んぼが広がっていました。
つんつくの稲株(いねかぶ)が、しゃれたチェックもようを作っています。
ところどころの畑では、ガタガタ、耕運機が働いていて、通った後に、しっとり、黒土のしまもようをえがいて行きます。
用水路のつつみには銀色のススキがゆれ、わたりのとちゅうの水鳥たちが、のんきに、遊んでいます。
そんなのどかな風景の中をも、固い灰色の道路が、ズーンと、のびて、たくさんの車にまじって、町ではあまり見かけないような大型トラックも、ひっきりなしに行き来しているのでした。
オイボレはいい気分でした。こんなに力いっぱい飛んだのは、本当に久しぶりでした。
オイボレは、巣立ちしたばかりのころを思い出しました。