ハトのオイボレ、最後の冒険(6/8)

文・伊藤由美   絵・伊藤 耀

「クゥククッ! してやったぞ! トンビもカラスも、出しぬいてやった! 私も、まだまだ、捨てたもんじゃないぞ!」
オイボレは、高度を上げながら、ぐんぐん、飛んで行きました。

町を過ぎて、目の下には、刈り取り後の田んぼが広がっていました。
つんつくの稲株(いねかぶ)が、しゃれたチェックもようを作っています。
ところどころの畑では、ガタガタ、耕運機が働いていて、通った後に、しっとり、黒土のしまもようをえがいて行きます。
用水路のつつみには銀色のススキがゆれ、わたりのとちゅうの水鳥たちが、のんきに、遊んでいます。

そんなのどかな風景の中をも、固い灰色の道路が、ズーンと、のびて、たくさんの車にまじって、町ではあまり見かけないような大型トラックも、ひっきりなしに行き来しているのでした。
オイボレはいい気分でした。こんなに力いっぱい飛んだのは、本当に久しぶりでした。
オイボレは、巣立ちしたばかりのころを思い出しました。

伊藤由美 について

宮城県石巻市生まれ。福井市在住。 ブログ「絵とおはなしのくに」を運営するほか、絵本・童話の創作Online「新作の嵐」に作品多数掲載。HP:絵とおはなしのくに

伊藤 耀 について

(いとう ひかる)福井県福井市生まれ。福井市在住。10代からうさぎのうさとその仲間たちを中心に絵画・イラストを描き始める。2019年からアールブリュット展福井に複数回入賞。2023年には福井県医療生協組合員ルームだんだん、アオッサ展望ホールその他で個展開催するほか、県内アールブリュット作家展に出品するなど、活動の幅を広げている。現代作家岩本宇司・朋子両氏(創作工房伽藍)に師事。HP:絵とおはなしのくに