バイバイパンダパン(2/4)

文と絵・満月詩子

「なんか、気に入らねえなぁ」
お父さんが、ちらっと結那を見ました。
結那は体がふるえないように、ぐっと力をこめます。
「結那はいい子にしてたか?」
「う、うん」
結那は、引きつらないように気を付けて、にっこりと笑います。

「あっ・・・」
その時、冷蔵庫を開けたお母さんが声をあげました。
冷蔵庫には、食料品がほとんど入っていませんでした。

「ごめんなさい。今日、お給料が出たから買い物に行こうと思っていたの。あなたが帰るまでには、と思っていたんだ・・・」
「はあ?」
お父さんの大声で、お母さんの話は消えてしまいました。

「おまえ、こっちこい」
「・・・」
お父さんが顔をとなりの部屋に向けます。それに合わせてお母さんは、だまって部屋に入っていきました。

満月 詩子 について

(みつき うたこ) 佐賀県生まれ、在住。学校図書館勤務を経て、福祉関係の仕事に就く。現在は、仕事以外に、ボランティア活動なども行いながら、絵本や児童書の創作を続けている。日本児童ペンクラブ、日本児童文芸家協会会員。 2012年、『その先の青空』で、第15回つばさ賞、佳作に入選 おもな著作に、『さよなら、ぼくのひみつ』【『さよなら、ぼくのひみつ』(国土社)に収録】。『たまごになっちゃった?!』【佐賀県DV総合対策センター発行】、『あかいはな」』【『虹の糸でんわ』(銀の鈴社)に収録】などがある。