「なんか、気に入らねえなぁ」
お父さんが、ちらっと結那を見ました。
結那は体がふるえないように、ぐっと力をこめます。
「結那はいい子にしてたか?」
「う、うん」
結那は、引きつらないように気を付けて、にっこりと笑います。
「あっ・・・」
その時、冷蔵庫を開けたお母さんが声をあげました。
冷蔵庫には、食料品がほとんど入っていませんでした。
「ごめんなさい。今日、お給料が出たから買い物に行こうと思っていたの。あなたが帰るまでには、と思っていたんだ・・・」
「はあ?」
お父さんの大声で、お母さんの話は消えてしまいました。
「おまえ、こっちこい」
「・・・」
お父さんが顔をとなりの部屋に向けます。それに合わせてお母さんは、だまって部屋に入っていきました。