「起きたんだね。おなかすいてないかい?」
ドアの音に顔を向けると、アンジさんがいました。
トレイに山盛りのパンをのせて、少しはずかしそうに笑っています。
「お腹空いているかと思ったけど、どれがいいかわからなくってね」
パンのこうばしい匂いにうながされ、結那のおなかがなります。
結那は、アンジさんとくせいのあんこたっぷり、パンダパンを指さしました。
手に取ったパンダの顔は、おだやかにほほ笑んでいるように見えます。
「このパンダ、悪パンダじゃない・・・」
「うん、悪パンダはもういないから、安心していいよ」
お母さんはふわりと目を細めると、結那を見つめました。
そして、フウッと息をはくと、結那の手をとり、強くにぎりしめました。