ピイが秋斗(あきと)の家に来たのは7月の終わり方のことで、ちょうど夏休みに入った日のことだった。
「お前、文鳥育てたことあっただろう」
「そんな赤むけたヒナ、だんちがいの難易度(なんいど)に決まってるでしょう! それに、私(わたし)そういうことするの反対」
夕方、秋斗が友だちと遊んでから帰宅(きたく)すると、お母さんがうで組みをしてお父さんをはばんでいた。
めずらしく早く帰ってきた秋斗のお父さんは、手元にケーキの箱をかかえている。半分ふたが開けてあるのを不思議に思いながら、すばらしいおやつを期待してそっとのぞきこんだ秋斗は、気味の悪いものを見たかのように飛びのいた。
ピイの飛んだ空(2/8)
文・七ツ樹七香