ピイの飛んだ空(2/8)

文・七ツ樹七香  

「秋斗(あきと)、やめなさいって――」
ヒナの箱をひざにだいたまま、手早く検索してひとときインターネットの情報とにらめっこした秋斗は、お母さんを見上げてきっぱりと言った。
「お母さん、スズメもう弱ってるかもしれない。おなかすいてるんだよ。こいつが死んじゃうの、オレいやだ! これ、すり餌! どこに行ったらいいの?」

〈スズメのひな エサ〉

キーワードを入れて調べれば、すぐにいくつものの情報が上がった。その中から見つけたのは産まれたばかりのスズメのヒナに与えていいとされるエサだった。
「秋斗!」
「もういい、お父さん連れてって!」
「いや、けど・・・、どうする?」
「明日死んじゃってもお母さんは知らないよ。勝手にしなさい!」
お母さんは、怒ったまま背中(せなか)を見せてリビングにもどっていった。

(本作品は「第30回日本動物児童文学賞」優秀賞受賞作を一部平易に改稿したものです)

七ツ樹七香 について

(ななつきななか)熊本県出身。「ピイのとんだ空」で第30回日本動物児童文学賞優秀賞。 「ラスト・オテモヤン」で第41回熊本県民文芸賞小説部門一席を受賞。熊本日日新聞に全10回連載され好評を博す。本作は朗読CD化、熊本県内数カ所の図書館で視聴可能。 ほか、第1回西の正倉院みさと文学賞 佳作、集英社WEBマガジンコバルト がんばるorがんばらない女性小説賞大賞、第16回深大寺恋物語 調布市長賞など。 共著に『謎解きホームルーム2』『恐怖文庫』『感動文庫』(いずれも新星出版社)動物が好き。犬と小鳥と暮らしている。