ピイの飛んだ空(7/8)

文・七ツ樹七香  

ピイ、ピイ、ピイ――。

ピイは生き餌に大いに喜び、目の前に落としたハエトリグモを追いかけてつかまえることもできるようになってきた。時折はいっしゅん考えるような仕草も見せるので、あのカメムシ事件もピイの役に立ったのだろう。
一日一日、成長が目に見える。

秋斗(あきと)の絵日記はピイの成長の様子が毎日みっちりと書かれていた。
たよりなかった羽もすっかりりっぱになって、ふんわりとしたフォルムになったピイは愛らしい鳥のヒナそのものだった。ピイは文鳥のように、秋斗の手に乗ったりはしない。運動と食事の訓練のためにケージの外に出す時だけが、秋斗とピイがたがいのぬくもりを感じるしゅん間だった。
きずつけないようにそっとつかむと、ピイはおとなしくしていやがらない。

七ツ樹七香 について

(ななつきななか)熊本県出身。「ピイのとんだ空」で第30回日本動物児童文学賞優秀賞。 「ラスト・オテモヤン」で第41回熊本県民文芸賞小説部門一席を受賞。熊本日日新聞に全10回連載され好評を博す。本作は朗読CD化、熊本県内数カ所の図書館で視聴可能。 ほか、第1回西の正倉院みさと文学賞 佳作、集英社WEBマガジンコバルト がんばるorがんばらない女性小説賞大賞、第16回深大寺恋物語 調布市長賞など。 共著に『謎解きホームルーム2』『恐怖文庫』『感動文庫』(いずれも新星出版社)動物が好き。犬と小鳥と暮らしている。