「なんだ、黒岩じゃないか」
ああ、この人が、気の毒な黒岩さんか。
「なにしに来たんだ?」
「なにしに来たは、ないでしょう。捜し猫コーナーに依頼してきた中園さんの件に決まってるじゃないですか」
「そうか。では、帰れ! 黒岩、ハウス!」
猿神さんが、玄関を指す。
いくらチャッピーを返したくないからって、ハウス! とは・・・。
「先輩、僕は、犬ですか?」
「バカか、おまえは。そんなデカい犬が、いるわけないだろ!」
「僕はバカではありません! 先輩は昔からある諺を知らないんですか! バカと言う奴がバカ」
類は友を呼ぶだな、これは。
「あの、ひとまず、ぜんざいを食べませんか?」
とオレは、明かりをつけていく。
「わかった。温めてくれ」と猿神さんが、黒岩さんを睨みつける。
「ごちになります」と黒岩さんが、猿神さんを睨み返す。